ニ交元と三次元が生み出す持抗は、見る者を造形の世界へ引き込んでいく。
画面を覆い尽くす模様の中、裸体の女性が片膝を立ててかけている。足元には器に入ったレモンが4つ、その向こうには東洋風の鉢に植えられた植物が見える。
1920年代に描かれた一連のオダリスクの中では特異な作品である。例えば、この数年前に描かれたへ赤いキュロットをはいたオダリスク)(ポンピドゥーセンター・国立近代美術館蔵、パリ)
柔らかさを感じさせる肉感的な身体表現と比較すると、その違いは明白だろう。
肩から背中、腰、左足にかけての不自然な直線が、この裸婦の身体に硬直したような印象を与えている。直線的な輪郭で囲まれ単純化されたフォルム、細部を削ぎ落とした楕円形の頭部、個性や表情のない類型化された顔つきは、生身の肉体というよりはむしろ、同じ時期に制作された彫刻作品(腕を上げた大きな坐る裸婦)を思わせる。ここでのマティスの関心は、彫刻のようなボリュームを持つ人体と模様で埋め尽くされた平面的な背景とをいかに折り合わせるかという点にある。
それにしても、見れば見るほど不思議な空間である
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